B面──。デジタル世代の方には聞き慣れない言葉かもしれません。昔のアナログレコードやカセットテープには、表の「A面」と裏の「B面」、2つの面がありました。
読者のみなさんが書店や図書館で出会い、読んでくださる岩波新書は、レコードでいえば「A面」に当たります。私たち岩波新書編集部がこのWebサイトを立ち上げたのは、その「A面」に加えて、岩波新書の「B面」もお目にかけたいと考えたからです。
1冊の新書は、著者と編集者との共同作業でつくられます。著者の仕事を「A面」とするなら、それを支える私たち編集者の仕事は「B面」です。このWebサイトでは、ふだんは黒子役の、私たち編集者の仕事をお見せしていきます。AB両面が一体となれば、岩波新書をより一層楽しんでもらえるのでは、と考えました。
また、B面の「B」は、バックステージの「B」でもあります。私たち編集者が日々「A面の岩波新書」をつくるなかで感じたり、考えたり、感動したことなど、新書づくりの舞台裏を、読者のみなさんにお見せできればと思っています。
そのような思いをこめて、このサイトの名前を「B面の岩波新書」としました。
2018年、岩波新書は創刊80年を迎えました。それは同時に、日本に「新書」が生まれて80年ということでもあります。現在、日本には「新書」と銘打つ本が100レーベル以上あるそうです。「新書」は、日本に華開いた独自の出版文化といえます。
80年にもわたり、学び好きな日本人の好奇心をささえ、刺激しつづけてきた「新書」。1テーマで1冊、文字数にして10万字ほどのコンパクトサイズの本の中には、「今」と「新しさ」が詰め込まれています。私たちはこのWebサイトを通して、「新書」という本の面白さ、素晴らしさ、そして奥深さも、お伝えしていきたいと思っています。
さて、これからどうなりますことやら。なにしろ慣れぬインターネットの世界。紙の本が専門の私たちが、背伸びをして挑戦するWebサイトです。どうかあたたかい目でお見守りください。よろしくお付き合いのほどお願い申し上げます。
岩波新書編集長
永沼 浩一